濃縮装置(東京理化器械/EYELA)のご紹介~宮崎県 – 株式会社山口商会 宮崎県の理化学機器・分析・校正・移設

第9回

濃縮装置(東京理化器械/EYELA)のご紹介~宮崎県

こんにちは。今回のブログを担当させていただきます、福田と申します。

  • 株式会社山口商会
  • 福田 太一
  • モットー:取扱製品に探求心

弊社では分析装置本体の他にも前処理装置としまして、サンプル濃縮装置の実績が多数御座います。

その中でも先日、食品関係のお客様へロータリーエバポレーターを導入させていただきました。
普段、私は有機溶媒の除去のために使用されるお客様への導入経験が多かったのですが、今回は食品サンプル用途での導入経験を振り返りながら、ロータリーエバポレーターのご紹介をいたします。

 

Study Session

ロータリーエバポレーターとは?

ロータリーエバポレーターの3本柱

回転・・・サンプルの蒸発面積を薄く、そして広く。蒸発効率化UPへ
減圧・・・サンプルの沸点を低くし蒸発を積極化
加熱・・・回転+減圧により今にも蒸発したいサンプルの背中を後押しし、蒸発へ

今回導入したシステムを例にご紹介します。

システム構成は全て、東京理化器械株式会社製品を採用いただきました。
東京理化ホームページ https://ssl.eyela.co.jp/

■ 回転
ロータリーエバポレーター本体部  型式:N-1300E-W

 

ロータリーエバポレーターと名の付く装置であれば、何かを回転させるのでは?と感じるネーミングの通り、サンプルを入れた試料フラスコをグルグルと回転させます
底が丸いガラス製のフラスコを使用しまして蒸発面積を薄く、広くすることにより蒸発しやすい環境をつくります

■ 減圧
真空ポンプ 型式:NVP-1000V

 

真空コントローラー 型式:NVC-3000

 

ロータリーエバポレーターの減圧空間は、以下のような構成と役割を担っています。
1.試料フラスコ(サンプル室)
2.受けフラスコ(サンプル室内で沸点の低い物質が先に蒸発した後の控室)
3.冷却塔(蛇管を内蔵し、蒸発した気体を液化させるための冷蔵室)
4.ロータリージョイント部(試料フラスコ→冷却塔、受けフラスコへの渡り廊下。)

装置外観のガラス器具、全ての内部を減圧しております。

■ 加熱
ウォータバス 型式:SB-1300

 

サンプルを加熱するお風呂です。試料フラスコごと入浴させます。
減圧により沸点を低くしたサンプルに温度を加えて蒸発を促進させます。

 

■ 凝縮
冷却水循環装置(チラー)  型式:CCA-1112A

 

蒸発した気体を間接的に冷やし凝縮し、受けフラスコへ導きます。
冷却水は冷却塔の蛇管の中をグルグルと循環しております、水道水より冷たく冷やしますので凍らないよう不凍液を混合したものを使用します。

 

Study Session

納品時の試運転の体験をもとに、
濃縮例をご紹介します。

今回は、柑橘系果物の飲料水を試運転時に濃縮してみました。
濃縮に適した条件が分かっていないサンプルでしたので、条件は手探りでトライしました。

■ 濃縮条件
試料フラスコ1L内に300ml程サンプルを投入。
試料フラスコの回転速度は120rpm。
少しずつ回転速度を速くしながら、蒸発面積が広くなった回転数にて一旦設定しました。

ウォーターバスの温度:45℃設定。
温度が高い方が早く濃縮が終わるかもしれませんが、果実の風味を保つためになるべく低い温度で調整したと考えました。
もう少し低い温度でも大丈夫だったかもしれません…。

冷却水の温度:15℃設定。
今回は有機溶媒ではなく、果実類の水分が蒸発する想定なので一旦、水温以下を目安に設定しました。

真空度:今回は真空ポンプと合わせて真空コントローラーも採用いただきましたので、最初はマニュアル運転でダイヤルを回し、真空度を低くしながら探っていきます。
サンプルにより適切な真空度は様々です。

設定が完了し、濃縮作業へ。
試料フラスコが回転を開始し、ウォーターバスへ。
さすがに45℃程度では蒸発しませんので、減圧してサンプルの沸点をさげていきます。

真空コントローラーをマニュアル運転に設定し、少しずつダイヤルを回して真空にしていきます。
大気圧1,000hPa付近からからあっと言う間に下がってきました。

 

Study Session

真空ポンプと突沸

試料フラスコ内がブクブク、蒸発の開始を確認。更にダイヤルを回して…

あっ…やってしまいました。突沸です。
一旦真空ポンプを停止します。
蒸発させすぎてしまいました…減圧しすぎたり回転速度を速くしてしまうと起こる場合があります。
濃縮ではなく、全てを蒸発させてしまうところでした。

予習をすれば分かることではあったのですが、40hPaを下回ったころに突沸しました。
水で想定すると、45℃加熱の場合は100hPa前後で蒸発が開始するようです。

真空コントローラーにはオート運転機能が搭載されており、減圧しすぎないようにポンプを制御してくれます。

 

また、各有機溶媒別に真空度が読み込まれておりますので、溶媒が前もって分かっているサンプルに対してはポンプにお任せが可能です。
 

 

オート機能に早速、切換えて運転を再開しましたところ、今回のサンプルですと60~70hPaが丁度いいところみたいです。
突沸することもなく徐々に蒸発が始まりました。

物質の沸点の違いにより、沸点の低いものが先に蒸発を開始し、冷却水で凝縮されポタポタと受けフラスコに溜り始めました。
透明の液体でしたので果実類より水分が先に蒸発していると推測します。
それに比例し試料フラスコに残っているサンプルは少しずつ色が濃くなってきました。
沸点の差がいい感じに働いている様です。

そのまましばらくクルクルと回る試料フラスコを眺めておりましたが、装置の正常が確認できましたので一旦真空ポンプを止めて、大気圧へ戻します。

大気圧に戻ったことを真空コントローラーの表示にて確認し、試料フラスコを取り外した瞬間に…宮崎県名物のマンゴーの香りがしました。
あと少しオレンジの香りも…マンゴーとオレンジのミックスだった様です。

中身を知りませんでしたので、濃縮後やっと分かりました。
味も香りも濃くなっており、カルピスの原液に近いものが出来上がりました。

また、受けフラスコ側は透明の液体が凝縮済みでした。
香りも程よく残っており、水分が蒸発した際に香りも付いてきたみたいです。
焼酎の割水にいいかもしれません。

 

Study Session

試運転での気付き

試運転での気づきですが、仮にお鍋で加熱して同じことをしようとすると、濃縮どころか、ベトベトになったお鍋を洗うだけの作業が容易に想像できます。

真空ポンプによる減圧→沸点の低下がとても重要だと認識しました。
特に果物や野菜の食品類で熱に弱いサンプルでも、これならなるべく低い温度で濃縮が可能です。

次回は、エバポレーターと姉妹装置の凍結乾燥器(フリーズドライ)についてご紹介いたします
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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